アメリカ最大級の新聞社ニューヨーク・タイムズが2019年12月に「AIによって戦争が簡単に。その方法をここに公開」(A.I. Is Making it Easier to Kill (You). Here’s How.)という約20分の動画ジャーナルを公開した。
AI(人工知能)の発展によってAI技術が軍事技術に利用されれることによって、AIを搭載した兵器が人間の判断を介さないで標的を攻撃することの脅威、人間の制御が効かなくなることの恐怖を専門家のインタビューや作成した動画を交えて説明。AIを搭載した兵器の特徴なども解説している。またNGOや国際社会での議論の様子や、各国で足並みが揃っていないことも伝えている。
▼A.I. Is Making it Easier to Kill (You). Here’s How. | NYT(2019年12月、ニューヨーク・タイムズ)動画は音声・字幕ともに英語のみ。
AI技術の軍事活用は特に、人間の攻撃への判断を介さないでAIが自身で判断して標的や人を攻撃する自律型致死兵器(Lethal Autonomous Weapons Systems:LAWS)に発展することが警戒されている。一方で、AIを搭載した兵器やロボットが人間を攻撃してくることに対して、SF映画のような世界のイメージも強く、自律型致死兵器は、まだ実戦で活用されたり、実際にAIの判断で攻撃されて殺害の犠牲になった人がいないことから、なかなか一般の人には理解されがたい。動画の中で国際会議の議論で「(AIを搭載した兵器が人間を攻撃してくることを議論するのは)1960年代から80年代にインターネットについて語るようなことだ」というシーンもあるように、何のことを議論しているのか理解できない、想像できない人も多いだろう。
また、AIを搭載した兵器を導入することによって大幅なコスト削減や軍人の命を守ることにつながることから政府や軍にとっては、そのような兵器を歓迎するため、AIを搭載した兵器開発に反対しない国もある。そのような兵器を利用するのは国だけでなくテロリストということもありうる。
どのようなAIを搭載した兵器が登場して、どのような被害が生じるのか想像もつかないことから自律型致死兵器の脅威がイメージしにくいところもある。例えば、対人地雷であれば、地雷の被害によって足を失って生活に苦しむ人々の映像と声を伝えることによって、その脅威と恐怖をイメージして実感することが容易である。被害者への義足支援や生活援助などNGOによる資金や寄付も集めやすい。だが、自律型致死兵器では、実際の被害が出ていないので、実被害者の声を伝えることはできない。またその恐怖も「想像」の世界であり、開発に反対するNGOの呼びかけも対人地雷や化学兵器などに比べるとインパクトに欠ける。
ニューヨーク・タイムズが今回、動画を作成して、AIを搭載した兵器の脅威を伝えようとしている。このような動画を通じて、視聴した人々はAIの軍事利用の脅威や自律型致死兵器の恐怖をイメージしやすくなる効果はある。だが、実際には小型ドローンなのか、もしくは大型兵器なのか、どのようなAIを搭載した兵器が判断して人間を攻撃してきて、どのような被害が生じるのかは「想像」の世界を越えてはいない。
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April 29, 2020 at 06:30PM
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