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鍵は家庭の外にある 新型コロナの家庭内感染を防ぐには?【#コロナとどう暮らす】(坂本史衣) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

大都市圏を中心に全国で新型コロナの感染者数が増えています。東京都では、感染経路が判明している人のうち家庭内で感染した人の占める割合が約30%と最も多くなりました。今回は新型コロナの家庭内感染を防ぐにはどうすればよいのか考えてみたいと思います。なお、この記事は2020年8月19日現在までに得られている知見に基づいて執筆しています。

おさらい・・・新型コロナの感染経路を振り返る

感染予防の第一歩は、感染経路を知るところから始まります。感染経路を切ってしまえばうつらないからです。新型コロナの感染経路についてすでにご存じの方は、ここは読み飛ばしてください。

新型コロナには2つの感染経路があることが知られています最も重要なのは飛沫感染、次いで接触感染です。

また、いわゆる3密空間においてエアロゾルやマイクロ飛沫などと呼ばれる微粒子により一時的に空気を介した感染のリスクが生じる可能性が指摘されています。

一つの場所で複数の感染経路による感染が同時に起こることがあります。例えば、3密の空間では飛沫感染、接触感染、空気を介した感染という3つの感染経路による感染のリスクが同時に存在します。また、会食の席では飛沫感染が主体になると考えられますが、食器類を共有する場合などは接触感染も起こり得るでしょう。

飛沫感染

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筆者作成

感染者が会話や咳・くしゃみをする際に、鼻や口から出るウイルスを含む飛沫※が、1~2メートル以内に向かい合っている人の鼻や口から吸い込まれたり、目に入ることで感染する経路です。

※飛沫とは

水分を含む目に見えない微粒子で、鼻や口から出たあとは、放物線を描きながら重力によって地面に落ちる。

接触感染

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筆者作成

ウイルスで汚染された環境やモノの表面に触れた手で顔(眼、鼻、口の粘膜)に触れることで感染する経路です。健常な皮膚や髪の毛からウイルスが侵入することはありません。

空気を介した感染

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筆者作成

換気が悪く、人が多く、発声のあるいわゆる3密の空間で、感染者の付近の空気中にウイルスを含むマイクロ飛沫やエアロゾルなどと呼ばれる微粒子※が一定時間滞留し、これを吸い込むことで感染すると考えられている経路です。一度に大勢が感染するリスクがあります。

※エアロゾルとは

定義は定まっていないが、液状または固形状の微粒子を指す。院内感染対策の領域では、水分が蒸発したあとにできた粒子径5μm以下の粒子を指すことが多い。軽いため空気中を漂うことができる。

※マイクロ飛沫とは

定義は定まっていないが、飛沫とエアロゾルの中間に位置する微粒子を指すことが多い。飛沫よりも軽いため空気中を漂うことができると考えられている。

家庭内感染を防ぐのは…難しいかもしれない

家庭内では通常3密空間は生じにくいので、主に飛沫感染と接触感染によって同居者への感染が起こると考えられます。また、特に自宅が狭い場合は、同居者どうしの距離が近いために飛沫を浴びる機会や、同じ環境表面に触れる機会が多いのも特徴的です。

また新型コロナの特徴として、症状が出る数日まえから直前の無症状の時期にノドで増殖するウイルス量がピークに達し、感染していることを知らずに人にうつす場合があることが知られています。二次感染例(誰かからウイルスをもらって感染した人)の約4割の感染源は、発症前の無症状の感染者だと推計されています

以上を踏まえると、家庭内に感染者がいる場合は、無症状の時期に知らずに同居者にうつすリスクが高いので、「家庭内感染を防ぐのは難しい」と言ってよいと思います。実際に筆者も職場や友人との会食の際に感染したと考えられる患者さんが症状を訴えて受診して間もなく、同居者が次々と発症して新型コロナと診断されるケースを複数見ています。

そのため、家庭内感染を防ぐには、家庭の外での感染を防ぐことが鍵になります。それでも家庭の中でできることについては最後に取り上げますので、まずは家庭の外で行う感染予防について簡単に解説します。

家庭の外での感染をどう防ぐか

例えば2020年8月13日現在の東京都内の新型コロナの発生状況を見ますと、家庭内以外では、会食での感染や職場内感染が多いことが分かります。

どれだけ少人数であっても、感染者と近距離で、しかも対面で、マスクをせずに話しをすれば、飛沫をあびたり吸い込んだりして感染する可能性が生じます。食事や会議などの席で、無防備に飛沫を浴びる機会を減らすことが家庭内感染を防ぐ上で極めて重要です。職場内での感染予防については以前記事にしましたので、よろしければお読みください。

感染者が多い地域では、飲み会はもとより、同僚や友人と対面でとる昼食などにも感染のリスクがあります。参考までですが、病院では院内感染を防ぐために食事中の会話は一切禁止しているところもあります。どうしても同僚や友人と一緒に食事をしたい場合は、例えば互いの距離をなるべくあけてカウンターに横に並んで座る方が、対面に座るよりも感染のリスクは少ないでしょう。また、食事中には話をせずに、食べ終わってからマスクを着けて話をすると、さらにリスクを下げることができると考えられます。ほかにもやり方はあるでしょう。「近い距離で、対面で話をするときに顔に飛んでくる飛沫をどうすれば避けられるか」というポイントを押さえれば、さまざまな工夫ができると思います。

接触感染を防ぐには、石鹸と水を使った20秒以上の丁寧な手洗いが有効です。手洗いを行うタイミングとしては、帰宅後や調理・食事の前、トイレのあとなどが挙げられます。

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厚生労働省

ウイルスを家庭に持ち込まないために

家庭内にウイルスを持ち込まないためには、帰宅後なるべくすぐに石鹸と流水で手を洗うことが大事です。家庭に持ち込むモノにウイルスが付着していることを心配される方も多いと思います。

こちらこちらの実験結果を見ると、様々な素材の環境表面上で新型コロナウイルスが下図のとおり数時間から数日間、感染性を失わないで残ることが分かります(ただし、ウイルス量は時間の経過と共に減って行きます)。

しかし、いずれの実験でも多量の新型コロナウイルスを含む液体を、温度と湿度が常に一定(相対湿度40%~60%, 室温21-23°C)に保たれた環境表面に塗りつけて行われています。このような実験室と同じ環境は現実世界では見られないことや、風邪を引き起こすヒトコロナウイルスは数時間で感染性を失うことなどから、新型コロナウイルスが現実世界の環境やモノの表面上に感染性を維持したまま長時間存在することは考えにくいとされています。

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出典:

DOI: 10.1056/NEJMc2004973

DOI:https://ift.tt/2KxKR6O

画像原案:坂本史衣 画像制作:Yahoo! JAPAN

仮にウイルスが付着していたとしても、そこから接触感染が起こるには、

  1. 感染者の手にウイルスが付着する(あるいは感染者の鼻や口からウイルスを含む飛沫が出る)
  2. その手で触れた環境やモノにウイルスが付着する(あるいはウイルスを含む飛沫が環境やモノの表面に落ちる)
  3. ウイルスが感染性を失わないうちに(おそらく数時間以内に)
  4. 誰かがその限られたエリアに触れ、
  5. その後すぐに眼・鼻・口の粘膜に触れる

という複数のステップを経る必要があり、飛沫が直接顔にかかる経路に比べると効率的ではありません。そのため、接触感染は理屈上起こり得るものの、飛沫感染ほど重要な感染経路とは現在考えられていません。したがって環境やモノについては神経質になりすぎず、先ほど述べたタイミングと方法で手を洗うとよいでしょう。

参考までに筆者が家庭内での感染予防について受けることが多い質問への回答をご紹介します。

食料品から感染することはあるの?

スーパーなどで買った(冷凍、冷蔵、常温の)食料品、レストランやデリバリーで注文した食事から感染する可能性は極めて低いと考えられています

また食品のパッケージや買い物袋から感染したと考えられる事例も現在まで報告がありません。国内外の食品加工工場で新型コロナのクラスターが発生していますが、従業員が取り扱った食品を介した感染事例も確認されていません。また、新型コロナウイルスが食品を介して食中毒を引き起こすことはなく、水道水(上水)から感染することもないと言われています。

そのため野菜や果物は通常通り、水道水で洗ってから使えば十分ですし、外装や買い物袋(エコバッグ)の消毒や洗濯は感染予防のために必須ではありません(もちろん、気になるなら行えばよいと思います)。生肉はこれまで通り普段の食中毒予防のために十分に加熱調理するとよいでしょう。参考までに筆者は買ってきたものはそのまま冷蔵庫に入たり、食べたりしており、買い物袋の洗濯や消毒は目に見えて汚れない限り行っていません。食料品や袋から感染するリスクはゼロではありませんが、限りなくゼロに近いくらい低いと考えているためです。それよりも帰宅直後や調理の前に手を洗うことの方が有益だと思います。

帰宅後はすぐに着替えてお風呂に入らなくてはだめ?

衣類から新型コロナに感染したという報告はありません

感染予防のために、帰宅後すぐに着替えて入浴する必要性も低いです(これももちろん、気になるならそうすればよいと思います)。筆者は病院に勤めていますが、直接患者さんに接する機会が少ないこともあり(病室に入るときはガウンなどの個人防護具を着けています)、帰宅後すぐに着替えや入浴はしていません。衣類は洗剤を使っていつも通り洗濯し、乾燥させるだけで十分です。先ほども述べた通り帰宅したらすぐに石鹸と水で手を洗うことの方が重要です。

犬や猫の感染予防はどうすればいいの?

数例ですが、感染者と濃厚接触した犬や猫が新型コロナウイルスに感染したという報告があります。ただし重症化はせず、無症状または軽症で回復しています。感染したペットや動物の皮膚、毛などから人に感染したことを示す証拠は現時点まではありません。

ペットの感染を防ぐために、米国疾病対策センターは以下の対策を推奨しています。

  • 散歩中はリードにつなぐ。
  • 猫はできるだけ室内で飼う。
  • 同居者以外とペットが接触する機会を減らす。
  • 多くの人が集まるところに連れて行かない。
  • ペットにマスクはつけさせない。
  • 皮膚などを消毒しない。
  • 具合が悪そうなときは獣医を受診する。
  • 飼い主が新型コロナにかかったことが疑われる場合は、動物病院に預け、ペットとの接触を避ける。それが難しい場合はマスクをつけて、手を洗ってから世話をする。

ジョギングや散歩中に感染することがあるの?

ジョギングや散歩中に感染するリスクは低いです。もちろん、同居者ではない人と隣り合って、マスクをせずに話しながら歩く場合などはリスクが生じますが、例えば1人で、あるいは同居者と歩いたり走ったりする場合にはリスクはかなり低いと考えます(もちろん、同居者が感染しているならその限りではありませんが、その場合はそもそも同居している時点で感染のリスクが生じます)。

荒い呼吸をするとウイルスが鼻や口から出てきやすいと考えられています。ただし、仮に前を走っている人やすれ違う人が感染者で、その人の鼻や口からウイルスが出てきて空気中を漂ったとしても、それをタイミング良く吸い込んだり、目に入ったりする可能性は限りなく低いと言えます。

空気中のウイルスの動態に詳しいバージニア工科大学のLinsey Marr氏によると、人は歩いたり走ったりするときに体の正面の空気を左右に押しのけながら進むため、仮に空気中にウイルスがいたとしても身体の正面には当たらずに、脇にそれて去っていくとのことです。高速で走る車のフロントガラスに空気中の虫が当るとつぶれてしまうことがありますが、ゆっくり走る場合は空気に乗って車の横を抜けていく様子を想像すると分かりやすいと思います。

ジョギングや散歩中にマスクを着けていると熱中症にかかる恐れもありますので、むしろつけない方が良いでしょう。

家庭内に感染が疑われる人がいる場合

同居者に発熱や咳が出るなど、新型コロナが疑われる人がいる場合の対応については厚生労働省のホームページに解説がありますので、ここでの解説は今回は割愛します。

終わりに

繰り返しになりますが、家庭内感染を防ぐカギは、家庭の外で感染しないことです。特に無防備に飛沫を浴びない・飛ばさないことが最も重要です。これに加え、帰宅後、調理や食事の前、トイレのあとに石鹸と水で丁寧な手洗いを行うことも大切です。また3密の空間を作らない・行かないことにも注意すると良いでしょう。これらのポイントを押さえて、神経質になりすぎずに家庭の外での感染の機会を減らすことが、家庭内感染の予防につながります

注)記事では分かりやすさを優先し、新型コロナウイルス感染症を新型コロナと表記しました。また、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2は、新型コロナウイルスもしくはウイルスと表記しました。

※記事をお読みになって、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあれば、ぜひ下のFacebookコメント欄にお寄せください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。

また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

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August 19, 2020 at 06:01AM
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