AppleとGoogleによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策での協業で進展があった。アプリの画面イメージ(UI)やサンプルコードが公開されたのだ。だが、進展の詳細に触れる前に、もう1度、これがどういう取り組みか改めて振り返りたい。
というのも、前回の記事が掲載された後、ネットで「GAFAなどの外資に負けずに日本企業も頑張ってほしい」といった読後感想を見てショックを受けたからだ。まったくもってナンセンスな感想で、これはそういう次元の話題ではない。
世界経済再生の期待、背負った協業
両者の協業はIT企業による影響力のアピールでもなければ、競争の話でもない。世界規模で協力して今の状況を改善しようという話だ。何らかの方法で日本や米国だけ状況が改善してもCOVID-19の脅威はなくならない。だからこそ、各国政府が手を取り合う必要があった。そして世界のスマートフォン市場を二分し、数十億人の生活に影響力を持つAppleとGoogleの両社に、OSの違いを超えてCOVID-19対策を作ってもらう必要があり、両社が協業するに至ったものだ。
今、一部の国では新規感染者が減ってきたこともあり、経済活動の再開が始まりつつある。だが、その後には感染爆発の第2の波、第3の波のリスクがある。
AppleとGoogleの協業は、再開した経済活動を維持しながらも、爆発的な感染者の増加を抑えるためのものだ。
今、世界では長い外出自粛のおかげで新規感染が減った。だが、中にはまだ発症していない感染者、自覚症状のない感染者もいる可能性がある。経済活動を再開すれば、そうした人たちが他の人と接触することになる。
後日、検査で「いつの間にか感染していた」と発覚することは、これからもあるはずだ。
仮に、世界中のほとんどの人がiPhoneやAndroidのスマートフォンで、両社に認可されたアプリを使っていたとしよう。すると、その感染発覚者と、2週間以内に5分以上接触していた人の元に通知が届き「自分は感染している可能性がある」と知ることができる。
ちなみに、その感染者が誰なのかは分からない。だが、いつ接触し、どれくらいの時間接触していたのかは分かる。
このアプリの証拠能力を各国の保険機関が認めれば、PCRなどの検査を優先的に受ける判断材料にもなるだろうし、自己隔離などの行動にもつながるだろう。
通知を受けたのが会社員の場合は、この通知を判断材料に、「そういうこともあるだろう」と理解を示し、しばらく仕事を休んだ場合の生活を保証してくれれば、その人は安心して治療に専念できる(一方で、経営者が生活を保証してくれない場合は、通知を受けたことを隠して出勤し、他の従業員にも感染を広げて事業に大きなダメージを与えるリスクもある。有能な経営者なら、どちらが正しい判断か計算できるだろう)。
最近、「withコロナ」という言葉がよく使われるが、AppleとGoogleの技術は、まだしばらくは続くCOVID-19と共存する社会で、感染の増加を抑制しながらの新しい働き方、新しい経済活動を可能にするものだ。
では、ここで万が一、冒頭の読者のような誤解を、どこかのITベンダーがして、独自に似た技術を開発してしまったとしよう。しかも、広告にお金をかけまくって、これがある程度、広まってしまったとしよう。その技術は当然、プライバシー保護やセキュリティに、とてつもなく気を使ったApple/Googleの仕組みと互換性があるわけもない。つまり、接触追跡をできる人の分断が起きてしまい、人類の期待がかかった努力が水の泡になってしまう。
この技術の開発は、両社で合わせれば世界の30億人以上の利用者を持つ2大プラットフォーマーがやるからこそ価値がある協業なのだ。
なお、この技術は2つのフェーズで実装される。第1フェーズでは、各国の公衆衛生当局がAppleとGoogleが提供する技術情報に基づいて開発したアプリを用意。AppleとGoogleがそれを承認し提供する。アプリは早い国では5月中にも提供が開始されると見られているが、技術の恩恵を受けるためには、スマートフォン利用者が、アプリをそれぞれダウンロードして起動しておく必要がある。
一方、それから数カ月以内に実現する第2フェーズでは、アプリと同等の機能がiOSやAndroid OSに組み込まれる。このためアプリの入手をしないでも技術の恩恵を受けることができる(あえて恩恵を受けない選択も可能だ)。
実はAppleとGoogleが協業を発表する前に、中国や韓国の政府は、人々の接触を積極的に追跡し、感染拡大の封じ込めに成功した実例がある。ただし、これはGPS位置情報などを使って外出や接触を積極的に監視する方法で、プライバシーを犠牲にするやり方だった。
これに対して、その後、シンガポールの政府が、AppleとGoogleがやろうとしていることに近い、プライバシーに配慮した「Contact Tracing(接触追跡)」のアプリを開発する。ただし、iOSもAndroidも、共にOS内にプライバシー保護の仕組みがあるため、相互のOS間ではうまく機能しないなどの問題があり、また、アプリを任意でインストールする必要があった。このためかシンガポールでは、アプリ提供後であるにも関わらず、4月下旬に感染爆発が起きてしまっている。
そう考えると、AppleとGoogleの協業でも、本格的に効果を発揮するのは第2フェーズに入ってからで、第1フェーズでの成果は、各国の公衆衛生当局がどれだけ国民にアプリの利用を促せるかの手腕にかかっている。
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UIやサンプルコードの提供開始。アプリ提供形態の具体像も明らかに
一通り、これまでのおさらいをしたところで、今回、AppleとGoogleから新たに発表された内容を確認しよう。
だが、その前に1つ重要なアップデートがある。実は両社は4月24日の時点でも、専門家などの意見を集めて小さな状況のアップデートを行っているのだ。
そのアップデート事項の1つとして、提供する技術の名称の変更がある。前回の記事で伝えた「Contact Tracing(接触追跡)」という言葉には、どうしても人々のプライバシーを侵害しているのではないかと感じさせる部分がある。そうしたことに配慮してか、両社はこの技術を「Exposure Notification(ばく露通知)」と呼ぶことにした。「ばく露」とは、疫学でウイルスなどの問題因子に個人がさらされるという意味だ。
また、4月10日時点での発表時よりも、さらに個人を特定しにくくする工夫が加えられている(詳細はAppleとGoogle、新型コロナ「濃厚接触通知」のプライバシー強化をQ&Aで説明を参照)。
5月4日の新発表では、第1フェーズでのアプリ提供形態の具体像が見え始めてきた。
まず両社は、開発者用にアプリで使用するユーザーインタフェース(画面デザイン)と、アプリ開発の手間を軽減するサンプルコードの提供を開始する。
これと同時に両社は5月4日、アプリの提供に当たって守るべき必要のある以下のガイドラインも発表した。
- アプリは公衆衛生当局が自ら作るか、外部機関に依頼して作らせたものでなければならず、しかも「COVID-19対応」以外の目的では利用することができない
- Exposure Notification APIの利用の前にユーザーの同意を得る必要がある
- 利用者のCOVID-19感染が確認された場合、結果を共有する前に利用者の同意を得る必要がある(同意を得ると当局が利用者のデバイスにひも付いた「Diagnosys Key(診断鍵)」に対して「陽性」の情報を登録する)
- アプリは利用者のスマートフォンから可能な限り最小限の情報しか獲得してはならず、その利用はCOVID-19対策に限られる。ターゲティング広告を含め、それ以外のあらゆる個人情報の利用は禁じる
- アプリはスマートフォンの位置情報獲得を求めてはならない
- できるだけ多くの人が同じアプリを使用し分断が起きないようにAPIの利用は1カ国1アプリのみ。国によって州単位、地域単位で別アプリを提供したい場合は相談に応じる
なお、両社は既に2週間前に開発やテスティングに必要な開発環境の提供を開始している(AppleはXcode 11.5のβ版とプレリリース版のSDKを、GoogleはGoogle Play Servicesの最新アップデートおよびSDKを提供開始)。
AppleとGoogleは5月4日(現地時間)から、ばく露通知アプリ開発に必要なサンプルコードを提供する。iOS用はこちら、Android用はこちらから。ただし、サンプルコードを入手したからといって、開発したアプリをApp StoreやGoogle Playで提供できるわけではない。提供できるのはあくまでも国の公衆衛生当局に認められたアプリ1本だけだ。
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May 04, 2020 at 11:15PM
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